平成16年5月14日の講演会・運営委員会の報告

幹事 田嶋裕久


  1. 研究会講演会

     平成16年5月14日9時30分より、東京海洋大学越中島会館 セミナー室(1)において研究会講演会を開催した。
     約27名の参加を得て、活発な討論を交え盛会のうちに 11時30分に終了した。
     講演題目、講演者(敬称略)及び講演概要は下記のとおりである。

    (1) 「準天頂衛星におけるNICTのミッション」
    〇浜 真一(独立行政法人 情報通信研究機構)

     本講演では、準天頂衛星プロジェクトの背景/経緯、 目的/メリット及び準天頂衛星システムの用途及び 独立行政法人 情報通信研究機構(NICT)のミッション について報告された。

     準天頂衛星システムでは、通信・放送のほかに高精度測位の 開発と実用化を目指している。NICTのミッションとしては、 時刻・周波数基準の要素技術確立のために衛星搭載水素メーザ、 基準時系及び衛星−地上間の精密時刻同期技術の研究開発がある。

     このうち、衛星搭載水素メーザに関してはその小型・軽量化が 課題であり、これまでにプロトタイプ(試作器)及びBBM (室内試験モデル)を開発し、サファイア誘電体共振器及び 電子部を小型・軽量化することにより現在約63 kgを達成した。
     今後水素ビーム効率の改善やゲッタポンプ搭載量の最適化 によりさらに小型・軽量化し、また耐宇宙線対策、耐電磁適合 性を改善したEM(環境試験)モデル及びPFM(準搭載)を開発する。


    (2) 「次世代航法システムMSAS-GAIAの飛行評価結果について」
    〇張替正敏、冨田博史(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)
    星野尾一明(独立行政法人 電子航法研究所)

     MSAS-GAIAは主として航空路上からCAT-Iまでをカバーする 広域補強システム(MSAS)、着陸フェーズをカバーする狭域補強 システム(GBAS)及び慣性航法装置(INS)等の航法センサーを 組み合わせて離陸から着陸までの全飛行フェーズをカバーする 統合化した航法システムである。

     宇宙航空研究開発機構(JAXA)と電子航法研究所(ENRI)では、 MSAS-GAIAに対するMSAS補強の有効性を検証するために飛行実験を 行った。

     本講演では、その評価結果について報告した。95%測位誤差は 水平面内で1.8 m、高度方向で2.2 mであり、単独のGPSとINSを 組み合わせた場合の結果(水平面内で6.6 m、高度方向で20.6 m) に比べて大幅に向上することがわかった。
     また、信頼性の尺度であるアベイラビリティも単独のGPSと INSを組み合わせた場合に比べて大幅に向上することを確認できた。


    (3) 「インマルサット第4世代衛星とBGANサービス」
     〇木村佳史(KDDIエムサット)

     インマルサットでは現在4個の現用衛星と5個の予備衛星で 全世界をカバーして航空機や船舶に対する音声データ通信を 提供している。
     航空では航空管制のための自動位置情報伝送・監視機能 (ADS、旧自動従属監視)や管制官−パイロット間データ通信 (CPDLC)、運航管理や旅客用のデータ通信や電話サービス も行っている。また船舶に対してはGMDSSに対応した音声や データ通信のサービスを行っている。

     しかし、現在のシステムでは、インターネットに対応した サービスは陸上移動に対するものが主であり、航空用では 一部高利得アンテナを装備した航空機に対するswift64と 呼ばれる64 kbpsパケット通信が可能なだけである。
     そこで2004〜2005年に第4世代の衛星をインド洋と大西洋 西上空の軌道に打ち上げてBGANと呼ばれるサービスを提供 する予定である。

     これらの衛星にはグローバルビーム、ワイドスポット ビーム、及びナロースポットビームの3種類のビームをもつ アンテナが搭載される。
     このうちナロースポットビームは当初約200個のスポット ビームにより陸上域をカバーするが、後には256個のナロー スポットビームで地球全域をカバーする。
     航空用では、高利得アンテナの場合には最大492 kbps、 低利得アンテナでも最大55 kbpsの伝送速度でIPデータの 伝送ができる他、音声通信やFAX伝送も可能である。


  2. 研究会運営委員会

     研究会運営委員会は同日12時から13時まで、 東京海洋大学越中島会館セミナー室(1)において 開催された。
     出席者及び審議事項は下記の通りである。

    2.1 出席者

    惟村、天井、大沼、笠巻、木村、久木田、小塩、 塩見、田嶋、近村、長岡、西、石出

    2.2 審議事項

    (1)平成15年度活動報告

    • 平成15年度会計報告は原案の通り承認された。

    • 平成15年11月14日に神戸国際会議場で開催された 秋季研究会講演会の概要について報告がなされた。

    • ニュースレターは今年度2回(第48号、第49号) 発行されたことが報告された。


    (2)平成16年度活動計画

    • 今回の講演3件全てを「NAVIGATION」へ執筆依頼 することになった。

    • 次回講演会については、研究会長及び幹事に一任する。

    • ニュースレターの作成は本年度2回程度発行する こととした。
      また、ニュースレターのインターネット掲載について検討する こととなった

    • 平成15年度後期の編集委員会の概要報告があった。

    • 下記の通り役員の交代が承認された。
      会  長  (旧)惟村和宣(電子航法研究所)
             (新)石出 明(電子航法研究所)
      幹  事  (旧)石出 明(電子航法研究所)
             (新)田嶋裕久(電子航法研究所)
      編集幹事 (旧)天井 治(電子航法研究所)
             (新)天井 治(電子航法研究所)



「NAVIGATION」第161号 pp.102-103(平成16年12月)より


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