平成16年10月15日の講演会・運営委員会の報告

幹事 田嶋裕久


  1. 研究会講演会

     平成16年10月15日13時20分より、函館市の 「サン・リフレ函館」視聴覚室において研究会講演会を 開催した。
     地方都市における開催で最終日の午後の時間帯であったため、 参加者は11名と少なかったが、有意義な3件の発表と質疑が行われ 15時20分に終了した。
     講演題目、講演者(敬称略)及び講演概要は下記のとおりである。

    (1) 「技術試験衛星VIII型測位システムと実験概要」
    〇野田浩幸(独立行政法人 宇宙航空研究開発機構)

     技術試験衛星VIII型(ETS-VIII)は、3トン級の大型静止衛星と それに関連する各種の技術の開発と実証実験を目的としている。
     関連する技術としては、大型展開アンテナ、移動体衛星通信 システム、移動体衛星ディジタルマルチメディア放送システム、 測位等に係わる基盤技術が含まれる。

     ETS-VIIIは宇宙において、太陽電池パネルと大型展開アンテナは それぞれ全長40mとなる。
     測位技術については、測位基盤技術の習得及び測位システムの 高機能化、高性能化のための技術データの取得を目的とし、 準天頂衛星システムにおいて必要となる、高精度軌道・時刻決定 、測位信号衛星中継、ユーザ測位に関する実験が予定されている。
     衛星軌道・時刻決定実験の運用解析も報告され達成精度への 目処が得られた。ETS−VIIIは2005年に打ち上げが予定され、 この技術は準天頂衛星測位システムの開発に継承される。


    (2) 「RNPとRNAVの最近の動向」
    〇長岡 栄(独立行政法人 電子航法研究所)

     航空交通システムにおいて、従来は航法援助施設に合わせた ウエイポイントを結ぶように航空路が設定されていた。これに 対して、エリアナビゲーション(RNAV)では所望の飛行経路を 設定できるため、自由度が拡大できるメリットがある。

     飛行する航空機の航法性能を示す概念として、航法性能要件 (RNP)があり、RNAVのための航法性能を含めた能力を示すの に使われる。
     RNPのタイプは、航法システム誤差と操縦における飛行技術 誤差を合わせた総合システム誤差の95%含有幅をNMで示した数値 で示され、精度が要求されるルートほど小さな値となる。

     わが国におけるRNAV運航は平成4年より試行され、平成14年に 正式運用となり36本の経路が設定された。
     ターミナル空域においてはP(Precision)-RNAVが必要となる。 RNAVの経路間隔の設定、RNAV運航の評価が今後の課題である。


    (3) 「パイロットレポートに基づくTCAS-IIの運用モニタリング」
     〇住谷泰人、小瀬木 滋、白川昌之
    (独立行政法人 電子航法研究所)

     すでにほとんどの旅客機に搭載されている航空機衝突防止装置 (TCAS)は、航空機搭載の応答装置(トランスポンダ)を利用し、 二次監視レーダー(SSRモードS)の機能の一部を使用し、地上の 機材とは独立したシステムである。
     TCAS-IIは、航空機同士の通信で異常接近、空中衝突の可能性の ある場合に相対的な位置情報を提供するTA(Traffic Advisory)と 垂直方向のRA(Resolution Advisory、回避指示)まで行う。

     TCAS-IIの誤警報を減らす等の改善のため、この動作を制御する アルゴリズムが改訂されVer.7となった。日本ではRAが発生した場合 RAレポートが国土交通省航空局に提出されており、電子航法研究所 において、このRAレポートによる運用評価が行われた。
     その結果、各評価項目でアルゴリズムが改定による改善が 見られた。今後もモニタリングが予定されている。


  2. 研究会運営委員会

     研究会運営委員会は同日12:15から13:15まで、 視聴覚室において開催された。出席者及び審議事項は 下記の通りである。

    2.1 出席者

    石出、惟村、大沼、近村、長岡、田嶋

    2.2 審議事項

    (1)平成16年度前期活動報告

    • 平成16年度会計中間報告は原案の通り承認された。

    • 平成16年5月14日に東京海洋大学越中島会館セミナー室(1) で開催された研究会春季研究会講演会の概要について報告 がなされた。

    • ニュースレターは今年度1回目(第50号)が 発行されたことが報告された。


    (2)平成16年度後期活動計画

    • 今回の講演3件について「NAVIGATION」へ載せられるか 学会に確認することとなった。

    • 平成17年度春季研究会講演会は、発表課題として 中部国際空港、エアバスA380、ボーイング7E7、今後の航空機、 ETS-VIII等について検討することとした。

    • ニュースレターの作成は本年度2回程度発行する こととした。

    • 航空宇宙研究会のホームページを作る予定であり、 その実現方法について具体的に検討することとした。



「NAVIGATION」第162号 pp.69-70(平成17年6月)より


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