平成18年5月26日の講演会・運営委員会の報告

幹事 田嶋裕久


  1. 2006年度春季講演会

    (1) 日時:平成18年5月26日(金) 13:30〜15:30
    (2) 場所:東京海洋大学 品川キャンパス(1号館2階 22講義室)
    (3) 講演内容

    1) 「エアバスA380とその航法システム」
    ○山之内 憲夫(エアバス・ジャパン)

     エアバス社の世界最大の航空機A380は1990年代後半から開発され、 2005年4月にフランスで初飛行した。巨大な機体を支えるため 最新の複合材が多用されている。
     機内のスペースはB747より50%広く、客席を増やす以外にも いろいろなタイプが実現できる。550席のタイプで8,000 NMの航続距離があり、 成田から離陸した場合、北米、中米、アジア、ヨーロッパ、 アフリカ北半分まで飛行できる。
     フライトシステムは民間機として初めてハイドロ2系統と 電気2系統で駆動する安全性の高いシステムとなっている。

     航法システムには機体の姿勢の制御も含まれており、 地上等の航法システムを必要としない電波高度計を含む独立で 機体の位置決定するシステムと、VOR/DME等の航法システムを 利用する位置決定するシステムがある。
     GPSを基本としたMMR(Multi-Mode Receiver)と空港のデータベースにより、 空港面上においてもカーナビと同様の誘導が出来る。操縦系統はA320から 導入されたコンピュータで制御するフライバイワイヤであり、 コックピットはサイドスティックで操縦するようになっている。


    2) 「ヘリコプタ衛星通信システム」
    ○佐藤 正樹(情報通信研究機構)

     現在のヘリコプタ中継は、ヘリコプタが見える範囲に 車載局や中継局が必要なため、災害時に通信が困難な場合がある。 通信手段に衛星回線を利用し、衛星と直接通信することにより、 いつでもどこでもリアルタイムで災害映像を伝送が可能となる ヘリコプタ衛星通信システムを整備した。

     本システムの機能としては、双方向通信(音声・データ)、 準動画・静止画伝送(384kbps MPEG4)、撮影した位置の特定、 衛星捕捉・自動追尾、ヘリ局の遠隔制御、電波与干渉防止がある。

     ヘリコプタは飛行機や自動車より動揺が大きいので、 機体の姿勢が動揺しても通信を維持する必要がある。 通信はアクティブフェーズドアレーアンテナによりビームを衛星に向ける。 伝送誤りに対しては、畳み込み符号とリードソロモン符号による 誤り訂正を行っている。

     通信アンテナはヘリコプタのメインロータの下側に搭載されるため、 上空の衛星との通信路がロータブレードに遮断される対策として、 衝突を避けて、ロータブレードの回転の隙間のみ送信し、 衛星から同じデータを4回送りその中のアンテナに到達した信号を受信する。

     また飛行試験を実施し、災害時に役立つ性能を確認した。 このシステムは試験モデルであり、電気的特性等の技術的実証に 重点をおいたので、実用化には小型・軽量化が必要である。 また、映像品質を向上させる必要があり、384kbpsから1.5Mbpsに改修も行った。


    3) 「ヘリコプタのための障害物探知・
                   衝突警報システムの性能評価」
    ○米本 成人・山本 憲夫・山田 公男(電子航法研究所)

     低空を有視界飛行するヘリコプタでは電線のような目視では 発見困難な障害物がある。そこで障害物をカメラとミリ波レーダによって 自動的に検出し,パイロットが見やすい形式で表示する障害物探知・ 衝突警報システムの開発を行っている。

     電線のような線状目標検出のため可視光の高分解能・高感度カメラと、 温度差がある場合に探知距離を延長できる赤外望遠カメラによる画像を 用いて障害物を強調処理して表示している。

     また、カメラでは障害物までの距離が分からないため、 94GHzの障害物探知用ミリ波レーダを組み合わせている。 FMCWレーダでは送信信号の周波数を直線的に時間変化させることにより、 距離に対応して遅れてくる反射波と送信信号とを掛け合わせ、 そのビート出力のフーリエ変換で距離情報を得ることが出来る。

     複数の目標がある場合でも最も手前の目標の抽出する処理を行っている。 出力100mWの搭載用ミリ波レーダでは地上実験において631m2 の反射器で探知距離1,000m、誤差2%未満の結果が得られている。 また、800m以遠の送電線検出も成功しているが、 送電線の反射特性により検出できない方向がある。

     赤外線、カラー及びミリ波データの融合表示をPCで実現した実験装置を ヘリコプタに搭載し、実証飛行実験を岐阜県の山間部で行った。 データ処理、表示、更新率毎秒8枚程度で動作することが実証された。


  2. 2006年度春季運営委員会

    (1) 日時:平成18年5月26日(金) 12:15〜13:00
    (2) 場所:東京海洋大学 品川キャンパス(1号館2階 220室)
    (3) 出席者:石出、近村、久木田、天井、田嶋
    (4) 議題
    1) 平成17年度後期活動報告

    • 平成17年度会計報告は原案の通り承認された。

    • 平成17年10月21日に神戸大学 深江キャンパスで 開催された春季研究会講演会の概要について報告がなされた。

    • ニュースレターは17年度2回(第52号、第53号)が 発行されたことが報告された。


    2) 平成18年度活動計画

    • 今回の講演について、可能なものは学会誌「NAVIGATION」 への投稿を講演者に依頼することとなった。

    • 平成18年度秋季研究会講演会は、発表課題として 富山周辺の空港の運用、MTSATの通信関係等 について検討することとした。

    • ニュースレターの作成は18年度2回程度発行 することとした。

    • 開設済みの航空宇宙研究会のホームページでの 研究会資料等の公表について検討することとした。



「NAVIGATION」第164号 pp.75-76(平成18年6月)より


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